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名文は読み飛ばせない [本]

 瀬戸内晴美『恋川』読了。
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 昔の文庫本(文字が小さくて分厚い)で、読むのにけっこう時間がかかった。が、すらすらーっと読み飛ばせない。決して一つ一つの文が長いわけでもないし、美辞麗句が多い文ではない。むしろ平易な文章で、短い。だが、名文とはそういうものなのだと思うが、ついつい酔っぱらうと一章丸ごと音読してしまう。これが筆力なんだと思う。
 恋愛小説としては、こんな女は今時もういないだろうというような古風な女がたくさん出てくるが、案外黙っているけれども、心情的にはまだ存在するのかも。周囲の女たちの姿を描くことによって、生身の女以上の女を追い求める人形遣いたちの姿を浮き彫りにする。やっぱり、すごい。
 文楽に関しては、高校時代に学校主催の芸術鑑賞で見て以来見たことがないが、この小説を読むと、あんなものが小便臭い小娘に見せるものではないことがよく分かる。江戸の「色」ではない、上方の「情」を、東北の女子高生がわかるものではない。と言うわけで、義太夫の語りはちっとも覚えていない。が、人形遣いが合間にやって見せた、人形のまるで生きているような動かし方は、とてもよく覚えているのだ。
 しかしまあ、恋が芸の肥やしであれば、どれだけ多くの女が踏み台になっていることか。好きでやってるみたいだから、全然いいけど。

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