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信仰というもの [本]

 三浦綾子『夕あり朝あり』読了。
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 同作者の作品は、どうしても高校の時の倫理社会で「読みなさい」と言われた『塩狩峠』の印象が強い! 強すぎる! でも、勉強はともかくとして、ヘッセの『車輪の下』[車(セダン)]よりも倉田百三の『出家とその弟子』よりも、これが面白かったんだよなあ。その後は『氷点』がしばらく学校で流行ったっけ……
 なんて郷愁にふけったりもするが、これは、篤いキリスト教徒にしてクリーニングの大チェーン店白洋舎の生みの親たる五十嵐健治の自伝。幼い頃に養子に出され、貧しさの中に中学へも進めず……というのは、明治の頃としては珍しい話でもないのだろうが、その後軍夫に応募して樺太に渡って密偵になろうとしたりなどいろいろ紆余曲折している間にキリスト教に目覚め、日本初の「蒸し洗い」(=ドライクリーニング[ブティック])の技術を工夫していく展開は、読んでいてわくわくする。
 強い信仰を持つが、他の宗教を排するわけではなく、また関東大震災の時には朝鮮人の職工を命がけで匿い……その辺りを見ると、一般の日本人の考え方(というか群集心理?)は今なおあまり変わらないんだなあ、とちょっと恥ずかしくなったりして。


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kontenten

排他的でないキリスト教は、日本特有かも知れません^^;アセアセ
日本はご存知の通り、八百万の神様を容認する文化ですものね(w)
我が家の菩提寺が天台宗のお寺なので、一応天台宗徒ですが・・・
世界宗教の第一回集い?は、比叡山であったようです。
一神教でない我が国の文化らしいと思います(^^)
by kontenten (2011-07-12 21:50) 

あーる

kontentenさん
しかし、かつては「耶蘇、耶蘇」と石を投げられ、「神社建ててまとめて祀っちゃおう」という人たちに対して、「それぞれの宗教の立場を尊重すべき」と主張したというのだから、時代を考えるとエライことだなと思います。今は本当に、良くも悪くも「なんでもあり」になったようですが。何かと物議を醸した中国人監督の映画『靖国』を思い出しました。
by あーる (2011-07-12 22:59) 

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