SSブログ

新・亡命作家? [本]

 ハ・ジン『すばらしい墜落』読了。

2011081502.jpg

 ハ・ジンは、ネットで調べたところ「哈金」だった。本の中には後書きを含め、一つもこの漢字表記が書かれていないのが残念。1956年生まれ、文革のさなかに青春を過ごし、20歳を過ぎてからようやく英語を勉強し始め、1985年に留学生として渡米し、1989年の天安門事件で帰国を断念、妻子を呼び寄せアメリカで作家になる……新・移民というにはある程度の年齢に達しているけれども、中国人作家としてこのジャンルは……知らないだけで、きっとたくさんいるのかも知れないけれども初めて読んだ。短編集で、NYクイーンズ区フラッシングに暮らすたくさんの中国移民たちの生活をそれぞれ鮮やかに切り取っていて、すいすい読めて面白い。それにしても、どうして中国の人たちはこんなにも大胆不敵なのかしら。もちろんいろいろなところで悩んだり傷ついたり、もうダメだ、と自殺を図ったりしているけれども、日本人ならもっとびびってもっとウェットになりそうなところを、けっこうそうでもない。周囲にたくさん同じような移民がいるから心強いのか、それともやはり集まると砂、一人一人は龍なのか。いいなあ、これ。

 宮下奈津『田舎の紳士服店のモデルの妻』読了。

2011081501.jpg

 前に読んだ『太陽のパスタ 豆のスープ』よりも面白かったと思う。北陸の小さな「売りのない町」に、夫・子供たちと共に来てしまった妻の十年間を、二年ごとに一つの章にして描いている。東京育ちで「田舎」というものさえ理解していなかった妻の、大きな事件が起こりそうで起こらない、どこにでもあるような日常なのに、全然飽きずに読ませられる。で、最後にはきっちり感情移入してしまった。最後の方の、息子の友達を元気づけるためにさらりと出た「自分でもほれぼれするほどの方言」という表現がとても気に入った。でも、田舎に育って、田舎ではやっていけない人もいる。

人気ブログランキングへ


nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0